オーストリアの作家Wolf Haasヴォルフ・ハースのブレナー・シリーズ三作目。
『きたれ、甘き死よ
』 (福本義憲 訳)
原作は"Komm, süßer Tod.
"。いいタイトルだなあ。訳者福本氏のサイト「ドイツ・ミステリーの館『青猫亭』」、サイトバーにリンクしてあります。面白いです。
このシリーズは、警察を辞め、その後、探偵になったブレナーが事件を解決していくのを描いたもの。ですが、今作ではなんとブレナーは探偵を辞めて、ウィーンの赤十字救護センターでドライバーとして働いてます。でも結局、探偵役を務めることになるんですね。
物語は、ブレナーの同僚が殺人事件を目撃するところから始まります。ライバルである救急同盟に仕事を奪われることが続いたり、殺人事件を目撃した同僚が何者かに殺されたりしたことから、ブレナーは再び探偵の依頼を受けることになるんです。
私、探偵物とかを読むときは、一応「参加」するんですよね。犯人は誰か予想しながら読む。でもこの本では……もうかなり早い段階で推理するの投げた。
えー、この作品は「語り手」がいて、口語体でブラック・ジョークなんかも交えながら、とにかく饒舌にブレナーたちの動きを語っていく、というのが大きな特徴になってるんです(訳すの大変そう…)。それで、「この話題はどこにいくんだ?」とずれた道すじを追っていくと、さっきのとこに戻ったり、しばらく前のとこにつながったり、その細かさに謎解きまで気がまわらない。…というか、推理できるような伏線はあんまりないんじゃないか?
ブレナーの口笛だって、意味があるのは初めから明示されてるんだけど、あれは絶対わからないだろー。謎解きとかの問題じゃないからなあ。で、推理させてくれないながらも、その語りが面白い。最初は気になったブラックなところも、二度目に読んだときはなぜかそれほど気にならなかったし。
あと本シリーズのもうひとつの特徴は、ブレナーの推理法……といっていいのか。作中で「散漫力」と名付けられてますが、彼は考えなければならないことがあると、かえって集中できなくなって他のことを考えてしまう…、そして結局はその中で「あ、これ使える」ってものを拾ってくるんです(語り自体もそんな感じだ)。ブレナーのちょっととぼけたキャラも見どころ。ルンガウアーが出てきたあたりなんてよかったなあ。
最後は「大爆発」して終わります。ちょっとびっくりした。そこまでしなくても…? あと気になったのは、一人あの状況で終わるとやばい人がいると思うのだが。どう説明するんだろ。
ブレナー・シリーズは本作と次の"Silentium!"が映画化。語り手がどうなってるか気になるし、観てみたい。
おまけ
オーストリア大使館のサイトでハース紹介のこんな文を見つけた。
「ハースのスタイルの特徴は徹底的に口語体を用いることで、あらゆる社会層の口語が登場し、日常語やことわざなどは勿論、誇張表現、隠語、ポップミュージックやテレビ・トークの場面での言い回しが飛び出し、読者はあたかも当事者としてその場にいるような気分にさせられる」
そうかー。こういうのって知らなくても楽しめるけど、知ってたらもっと楽しめるんだよねえ。ああ、もっといろいろわかるようになりたい。
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