ドイツの大ベストセラー作家、セバスチャン・フィツェック(Sebastian Fitzek)。
どのくらい人気かというと、デビュー作から出すたび、アマゾンでレビューが何百もつくくらい(多いので700超えてる)。そのせいか、一時期、新刊チェックしてると、よくフィツェックさんのおすすめコメントついてました。売上げに影響するのかしらねえ。日本でも4作が訳されてるので、ご存知の方も多いかと思います。
前からちょろちょろ読んでたのですが、このたび晴れて邦訳4作読み終えたので、まとめて書いてみます。
治療島/Die Therapie



娘が行方不明になった精神科医ヴィクトル。小さな島で独り過ごしていたところに、治療をしてほしいと女がやって来る。女はヴィクトルの娘と奇妙に符合する少女の話を語りだす。
フィツェックの作品は、「ノンストップ・サイコスリラー」や「ジェットコースター」と評されていて、たしかに「えー、どうなるの?」と続きが気になるお話ばかり。でも、このラストは賛否両論かなあ。わたしは「なんだよ、それ~」と言いました。とはいえ、途中の、島にいて、嵐が来て、頭痛・発熱で具合わるくて…という閉じた感じ、不自由な感じがやたら印象に残ってます。その状態で、次々わかる事実、起こる出来事に対応していかなきゃならないというね。
あと、この人、比喩が面白いの。たしかこの本だと思って探して見つからなかったんだけど、不安になった状態を、「夜中に信号で車を停めて、向こうから人が歩いてくるのを見たときに思わずドアをロックするような」みたいに書いてたのとか、わかる、と思った。
ラジオ・キラー/Amokspiel



犯罪心理学者で警察の交渉人のイーラは、ラジオ局で起こった立てこもり事件に連れだされる。犯人はラジオを使って人質殺人ゲームを始め、さらに、事故死した婚約者を連れてくるよう要求した。
こちらは、まず主人公がその日に自殺しようとしていたという最悪の精神状態で始まります。犯人とはラジオをとおしてしか話ができないし、事故死した婚約者の存在は謎だらけ。で、主人公のイーラが魅力的。この話が一番好きかな。
前世療法/Das Kind



弁護士のシュテルンは、10歳の少年に依頼を申し込まれる。重い病気の少年は前世療法を受けており、15年前に人を殺したと告白する。
霧雨のベルリン、ITによる逃げようのない監視。またもやそんな雰囲気作りがたまりません。カメラがリアルタイムで迫ってくるところなんてこわかったなあ。それから、少年の前世じゃない思い出で、他の人にしたらなんてことないけど何度も頭に浮かんでくる光景なんて、誰にでもあるよなあと思う。そして、シュテルンは骨折るわ、血まみれだわ…。
サイコブレイカー/Der Seelenbrecher



若い女性の体には傷をつけず、精神だけを破壊する<サイコブレイカー>。ある雪の夜、精神病院で新たな被害者が出る。そして、残された職員や患者も一人ひとり消えていく。
心理学実験のためのカルテ(↑のあらすじ)と、それを読む学生の二重構造になってるお話。つまり、本を読む読者もその実験に参加することになるという仕掛け…なのだが、ちと『ドグラ・マグラ』を連想してしまったな。
ここでは、吹雪に加え、安全装置のはずのシャッターに閉じ込められ、ちゃんと電話も使えません。しかも、主人公は記憶喪失で、前作同様、どんどん怪我していくうえに麻酔まで打たれる。
犯人はぜんぜんわからなかったけど、それ以上にくやしかったのが、作中に歌詞が出てくる曲がキュアーのだと気づけなかったこと! あんなに聞いてたのに。
以上4作、柏書房、赤根洋子さん訳で出てて、しばらく邦訳止まってるなーと思ってたら、ハヤカワから出るらしい。楽しみ。
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