おじいちゃんのこと

 おじいちゃんのことを文章に残しておきたいなとはずっと思っていたのですが、なかなか書けず……。
 前に認知症の本について書いたページをいまも見てくれてる人がいるようだし、三回忌が近づいているし、印象に残った出来事を書き留めておきます。

 わたしは仕事で家にいることが多かったし、おじいちゃんとの相性もよかったので、最期の1年をほとんど一緒にすごした。1919年(大正8年)生まれ、大家族の長男だったおじいちゃんは91歳で、たまーに家族がわからなくなることがあった。
 お昼を食べて、何やかんやしながら2人で居間にいたとき、おじいちゃんが言った。
「あんた、どこの人だい?」
 どうも、施設か役場の人だと思っているらしい。正直、悲しいです。最初のころは、「わたしだよ!」なんて言って、余計に混乱させちゃったこともある。
 こういうときは話に乗ったほうがいいんだよなーと思いつつ、偽名を使うのもやるせないので、「さなえっていいますー」と名前はそのままで多少合わせて答えた。
「ほー、そりゃ偶然だ。うちの孫もさなえっていうんだよ」
 そうか、孫のさなえは覚えてるのか。いまのわたしはどう見えてるんだろ?
 しばらく偶然ですねーと会話をして、わたしがトイレに行ったか、別の部屋に何かとりに行ったか、髪型を変えたわけでも、服を着替えたわけでもなく、同じ姿で戻ってきた。
「おー、いまな、おまえと同じ名前の人がいたんだよ。不思議だなあ」
 ほんとに不思議だ。2人のわたしは、何がどう違ったんだろ?

 おじいちゃんと一緒にいて気づいたけど、「ぼけちゃったら、全部わからない」わけじゃないのね。日によって時間によって違うし、上で書いたみたいに一瞬で変わるときもある。身の回りの世話より(息子の嫁にやってもらうのは恥ずかしがった)、こういう内面的なこととか言動のほうが大変だったなあ。本人も、自分がおかしくなったのか? って悩んでた。この辺りをわかってもらえないことが病院や施設であって、お仕事忙しいんだろうけど、ちょっと知ってほしいと思った。
 いい人もいたけどね。おじいちゃんは耳がものすごく遠かったから、病室の本人の前で今後の話を深刻な顔でしてたら、聞こえなくても雰囲気で察したらしく、夜、不安定になった。で、話をするときは本人のいないところでと頼んだ。「え? でも(わからないんじゃ)……」って反応だったけど、説明したらわかってくれて、次からは扉の陰から一所懸命ばれないように呼んでくれた。かわいい人だった。

 あと、夜中にお気に入りのお店に餃子やらカツ丼を食べに行きたがることがあったなー。夜がわからないみたいだった。「行っても、夜だからお店やってないよ」と言うと、「おまえはかてえなー」と言われた。そういう問題か?

オピニオン掲載 「仕事をすること――『ありがとう』伝えあう」

 地元の上毛新聞に書いた文、最後の回です。1年で7回書きました。

http://www.jomo-news.co.jp/news/kikaku/opinion2012/opinion20121031.html

 ブログのように翻訳やドイツ語に興味があるわけではない人に向けて書く文章。
 どのくらい説明を入れるのか、毎回、考えました。でも、ジャンルはちがっても通じるものはあるはずと思って。
 それから、期待されていたであろう「ドイツってこういう国ですよ」って文章は書けませんでした。自分の興味の問題もあるし、最大公約数みたいにまとめたくなかったし。

 でも、仕事を見直すいい機会になったなあ。

<追記>
 せっかくなので、過去に書いた分をまとめてリンクしておきます。

①「外国語を学ぶこと――異なる考え方にふれる
②「翻訳の仕事――地道に続けること大切
③「ドイツ語の勉強――使う目的をはっきりと」 
④「読書と日本語表記――気にしすぎると支障も
⑤「『必要』を知る――注力すべき点が見える
⑥「人には会ってみる――誤解から分かることも

映画 『ファウスト』

 さて、ロシアの巨匠、アレクサンドル・ソクーロフ監督。

 この監督の映画は何度か観てます。ぐんまには高崎映画祭という誇るべきものがあって、高校のころからここでいろんな映画を教えてもらいました。で、この映画祭が明らかに好きなんだろうという監督が何人かいて、その1人がソクーロフ監督です。たしか、映画祭に監督が来たことがあったような。

 そのソクーロフ監督がファウストを撮る。
 しかも、レーニン、ヒトラー、昭和天皇を描いた、権力者3部作とも呼ばれたシリーズの最後だという(つまり、4部作だった!)。この監督、舞台になる国の言葉を使いますからね。翻訳は、日本で公開されるドイツ映画を次々と手がけている吉川美奈子さんです。

 東京での公開から数か月後、とうとう『ファウスト』、やってきました。傑作『太陽』(昭和天皇の話)を上映してくれたシネマテークたかさきです(←映画祭からできた映画館)。


公式サイト

 とにかく密度が濃いんだ。
 始まってしばらくして、ファウストは「寝てないし、食べてない」と言う。そして、欲望の羅列がつづくのね。知、お金、名誉を求めて、時間がないと言い、恋した女性を追う。
 さらに、人との距離が近いんです。これは、距離「感」とかいうことじゃなくて、実際に、相手の顔が近かったり、人が押しあいへしあいしてたりする。しかも、この映画、たぶん1日の話。時間やら距離やら何やらが、ぎゅーっと濃縮してる。
 前半の街の場面は、あまりの濃さに「わたしはここでは暮らせない……」と思った。

 難解と言われるソクーロフ作品だけあって、「これは何だろう? どういうことだろう?」と思う部分がありつつ、ときおり、圧倒的に美しいシーンが来る。そう、圧倒的なの。

 ファウストとマルガレーテが泉に倒れて、波紋が一重だけ広がるシーン。
 後半になるにつれて色づいてくる画面の緑。
 ポスターなどで使われていた金色に輝くマルガレーテ。「え、あれ、このシーンで?」ってところで登場して、長くつづく。わたしはここが一番「これは何だ!?」と思った。しかも、じっと見てると、マルガレーテの顔がゆがんで見えることがある。わたしには彼女がただ無垢には見えなかった。

 そして、最後の、大地から熱水のふきだす場面。窪地に水が集まっては、ものすごい音を立てて飛び上がる。音と映像が相まって、何度も繰り返されて、もう本当に「ここにいたくない!」と思って、外に逃げたくなった。
 すごいパワー。パワーのある作品だった。


 観終わって、廊下に貼ってある『ファウスト』評の切り抜きを読む。だって、こんな映画、ほかの人がどう観てるか気になるじゃないか。そしたら、似たように読みまわってる人がいて、その人につられて、パンフを買ってしまった。もうあんまり買わないようにしようと思ってるんですけどね・・

オピニオン掲載 「人には会ってみる――誤解から分かることも」

 地元の上毛新聞に書いた文、6回目です。

http://www.raijin.com/news/kikaku/opinion2012/opinion20120904.html

 わたしは変なところで、石橋を叩いて、叩いて、叩いて……みたいな面があって、それでも完璧なコントロールなんてできるわけないし、どこかで手放すことも必要だよなあと思ったのでした。
 あとは単純に家にいることが多いので、外に出るといいなというね。というわけで、今年はもう少し外気に触れられるよう、LTEを入手しましたよ。

 さて、今年の夏にスポーツ交流で来てたドイツの男の子、茶道の歓迎を受けたらしく、そこで食べた和菓子の味を「Zucker pur (砂糖そのまま)!」と評していました。
 何を食べたんだろ…?

音楽 Casper

 ドイツのラジオで見つけた。Casper。
 ラップはあんまり聞かないんだけど、ドイツ語っぽい響きと、後ろのきれいな曲がいいなあと思って。

 で、アルバム買った。

 わたしの好きな Tomte の Thees Uhlmann と歌ってるのもあって、いいです。Lilablau も好き。So perfekt もよくラジオでかかってたなあ。
(↑の amazon.de では、全曲の一部試聴可)

«オピニオン掲載「『必要』を知る――注力すべき点が見える」

プロフィール

  • ぐんまでドイツ語を訳したり教えたりしてます。実務、出版、リーディング、チェック、いろいろします。名前はとりあえず はせ で。

    ドイツ語に興味を持ったのは、『ホッツェンプロッツ』を読んだのがきっかけ、でしょうか。
    読んだドイツ語本のリストはこちら

    出版翻訳について知りたいなら
    翻訳家のひよこ(ひよこの心得)
    ドイツ語圏のミステリーなら
    ドイツ・ミステリーの館『青猫亭』
    がおすすめです。くりかえし読んでます。

    メールは hasefutaあgmail.com まで。

    <訳書>

    裏話はこちら

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